使命感に導かれる二代目経営者の挑戦
「求められた場所で、まずは目の前の役割を果たす。それが自分のスタンスなんです。」
そう語る村上さんは、いまハートラインの事業統括部長として、会社の未来を支える立場にいる。
創業者である父のもとで会社に入り、建築、BPO、営業推進、不動産、インドアゴルフ、飲食と、幅広い事業を横断して組織を支えてきた。
その歩みは、最初から経営者を目指した“王道の後継者”のものではない。
営業に苦手意識を抱えながら始まった社会人生活、過酷な現場で磨かれた実行力、背水の陣でつかんだ資格、そして父の会社での試行錯誤。そうした経験の積み重ねが、いまの村上さんを形づくっている。
村上さんを突き動かしているのは、華やかな野心ではなく、「曲がったことが嫌い」という価値観と、「自分がやるべきことをきちんと果たしたい」という責任感だ。人とのつながりを大切にしながら、ハートラインを次の時代に合う会社へと変えていこうとしている。
営業に向いていないと思っていた。そこから始まった村上さんの原点
村上さんの社会人としてのスタートは、東京ガス系グループ企業だった。
担当したのは、給湯器やガスコンロをはじめとするガス設備機器の営業。既存顧客へのルート営業が中心だったが、当初は営業という仕事に対して苦手意識が強かったという。
22歳で社会に出たばかりの頃、相手は年上の取引先ばかりだった。何を話せばいいのか分からない。どう接すれば信頼してもらえるのかも分からない。そんな戸惑いのなかから、村上さんのキャリアは始まった。
それでも、日々の訪問を重ねるなかで少しずつ変化が生まれた。
商品説明だけで終わるのではなく、雑談を重ね、相手の近況を聞き、関係を築いていく。すると、給湯器の交換だけでなく、キッチンや浴室設備など、より幅広い相談が入るようになった。前任者では入り込めなかった提案ができるようになり、「この人に相談すれば何とかしてくれそうだ」と思ってもらえる場面が増えていった。
本人はあまり前に出るタイプではないと話しているが、その一歩引いた感覚がむしろ強みになっていた。人の表情や空気を見て、相手が何を求めているのかを察する。無理に押し込むのではなく、相手に合った提案をする。その積み重ねが、自信と結果につながっていった。
村上さんにとって営業とは、モノを売る仕事ではない。相手の課題を見つけ、解決する仕事である。そうした営業観の原点は、この時期に育まれていった。
“神対応”が仕事をつくる。1%の奇跡を引き寄せる営業観
営業時代のなかでも、村上さんの価値観を象徴する出来事がある。
団地で使用されていた壁貫通式給湯器の交換依頼を受けたときのことだ。通常であれば、在庫がなく即日対応は難しい機種だった。
それでも村上さんは、メーカーに直接掛け合い、必要な機器を急ぎで確保し、さらに職人にも無理を聞いてもらい、その日のうちに交換を実現した。周囲からは「神対応」と驚かれ、その後継続して仕事を受注できるようにもなった。
だが、その成果は偶然ではない。
普段からメーカーや職人と関係を築き、困ったときに動いてもらえる信頼関係をつくっていたからこそ実現した対応だった。仕事の外側にある関係づくりをおろそかにしないことが、いざというときの機動力になると村上さんは知っていた。
支店長から「どうやって取ったの」と聞かれたとき、村上さんは「タイミングが良かったです」と回答した。しかし、その“タイミング”は待っていれば来るものではない。行動を重ね、接点を増やし、人との関係を育てた先にだけ訪れる。
村上さんはこれを「1%の奇跡」と表現する。
たまたまのように見えるチャンスも、実際には地道な積み重ねの先にある。営業とは、その小さな可能性を信じて動き続ける仕事でもあるのだ。
事業統括部長として見つめる、会社全体の現在地
現在の村上さんの肩書は、事業統括部長。BPO事業部、営業推進部、不動産部門、インドアゴルフ部門、飲食部門など、建築以外のほぼすべての事業を横断的に見ている。経営数値の管理や分析だけでなく、事業責任者として現場に入ることもある。
ただ、村上さんがいま最も重視しているのは、数字以上に「人」だ。BPO事業部、管理部、営業部では社員との面談を重ね、現場で何が起きているのか、一人ひとりがどんな不安を抱えているのかを把握しようとしている。これまで会社として十分に行われてこなかった対話を、自ら前に出て進めている。
評価や指示だけではなく、その人が何に悩み、どこでつまずき、どうすれば前向きに働けるのか。そこまで見なければ、組織は本当の意味で前に進まない。村上さんはそう考えている。

使命感が支える、二代目としての責任
村上さんは、自分がこの会社に“やりたくて来たわけではない”という本音を隠さない。二代目として会社に入ったからといって、最初から経営に強い憧れがあったわけではない。むしろ、望んで背負った役割ではなかったからこそ、その重さを人一倍感じている。
それでも、これだけの責任を引き受けているのはなぜか。その理由を本人は「使命感」と表現する。曲がったことが嫌いで、会社としてやるべきことができていない状態を見過ごせない。役職を与えられた以上、その立場にふさわしい責任を果たしたい。そうした感覚が、自分を前に進ませているのだという。
大切なのは、理念や社訓を掲げるだけではない。それを社員一人ひとりが自分ごととして受け止められるように、言葉にして伝え、行動に落とし込むことだと村上さんは考えている。だからこそ、面談を重ね、自分なりの言葉で会社の未来を伝えようとしている。
会社の創業理念である「人とのつながりを大事にする」という精神には、今も深く共感している。村上さんが変えたいのは、その理念そのものではない。それを時代に合った形で再定義し、組織の中に根づかせることだ。
BPO事業にはAIの活用で様々な企業の課題を解決する力がある
村上さんが今後の成長戦略として明確に描いているのが、BPO事業への拡大だ。BPOは人手不足という大きな社会課題に対して、解決に寄与することができる事業である。
村上さんは、これからの時代、中小企業ほどコア業務に集中し、それ以外は外部に委託する流れが加速すると見ている。そのとき、一次受付や代表電話対応、定型的な電話業務などは、BPOとしての需要がさらに高まるはずだ。
なかでも可能性を感じているのが、AIボイスボットの活用である。コールセンター業務の多くは将来的にAIで代替できると考えており、特に代表電話のような一次対応であれば、かなりの割合を自動化できるという見立てを持っている。しかも、地方ではまだAI導入が十分に進んでいない。だからこそ、AIボイスボットサービスを導入しやすい価格帯で提供できれば、大きな差別化になる。
ただし、村上さんはAIですべてを置き換えられるとは考えていない。複雑な問い合わせ、感情のケアが必要な対応、判断や調整を伴う業務は、人にしかできない。だからこそ目指すのは、AIと人のハイブリッドモデルだ。AIが標準化できる部分を担い、人がより高度な対応を引き受ける。その組み合わせこそが、ハートラインの未来の競争力になると見ている。

求めるのは、好奇心とやる気がある人
村上さんがこれから一緒に働きたいと考えているのは、完璧なスキルを持つ人ではない。まず大切なのは、好奇心とやる気だという。人と関わることを面白がれること。相手の話に興味を持てること。そうした姿勢があれば、営業でもマネジメントでも、必ず伸びる余地があると考えている。
特に必要だと感じているのは、若い世代の存在だ。社内の年齢層が高くなるなかで、変化を起こし、会社に新しい空気を入れていくには、20代や新卒のような若い人材が欠かせない。経験が浅くても構わない。まずはルート営業や関係構築の仕事から、丁寧に育てていけばいい。自分や周囲が伴走しながら、一人前にしていく体制をつくりたいという思いがある。
村上さん自身、営業の面白さは、いろいろな人と話し、知らない世界を知ることだと語る。人の生き方や価値観、考え方に触れることで、自分の世界も広がっていく。その感覚を楽しめる人であれば、この仕事はきっと面白くなる。
仕事は、何をするかだけで決まるものではない。誰と働くかで、その意味は大きく変わる。だからこそ村上さんは、一緒に会社を前へ進めていける仲間を探している。

村上さんの歩みは、順風満帆な後継者ストーリーではない。営業に自信が持てなかった若手時代、過酷な労働環境、父の会社に入ることへの葛藤、そして二代目として背負う責任。そうした経験を経ながらも、村上さんはいま、会社の未来を自分の言葉で描こうとしている。
BPO事業への集中、AIと人のハイブリッドモデル、若手人材の育成、社員との対話、社外との関係再構築。どれも簡単な挑戦ではない。それでも村上さんは、派手な理想論ではなく、現場に足をつけた実務として、一つひとつ前に進めようとしている。
「自分がやるべきことを、きちんと果たしたい。」
その言葉の奥にあるのは、責任を引き受ける覚悟だ。人とのつながりを大切にしながら、会社としてやるべきことをやり切る。その使命感こそが、村上さんの強さであり、ハートラインの次の時代を切り拓く原動力になっている。
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